

楽天モバイルの契約回線数が、ついに950万回線を突破しました(2025年11月7日時点)。
「赤字が大きい」「本当に大丈夫?」というイメージを持たれがちな楽天モバイルですが、最新の2025年度第3四半期(Q3/25)決算を見ると、状況は大きく変わりつつあります。
この記事では、楽天モバイルを中心としたモバイルセグメントの業績や主要なKPIを整理しながら、黒字化に向けた現在地とユーザーにとってのメリットをわかりやすく解説します。
楽天モバイルは今どこまで来た?──950万回線突破の意味

まず押さえておきたいのが、楽天モバイルの「規模」です。2025年11月7日時点で、MNO・MVNE・MVNO・BCP用途などを合計した全契約回線数は950万回線を突破しました。
楽天モバイルは、
- B2C(個人向け)の新規契約・乗り換え(MNP)
- B2B(法人向け)の回線・ソリューション契約
の両面で獲得を進めており、年内の1,000万回線達成を明確なターゲットとしています。
全契約950万回線と、1,000万回線へのロードマップ
Q3/25(2025年度第3四半期)のMNO純増数は9.5万回線。前年同期比で+21.9%と、“閑散期”と言われる7〜9月としては堅調な伸びです。楽天カードとの連携施策など、グループ横断のキャンペーンも純増を後押ししました。
このペースに加え、法人向け回線や各種キャンペーンによる上乗せを踏まえると、残り50万回線は十分現実的な水準と言えます。
ただし、年内達成となるとハードルは高い。引き続き、魅力をお伝えできるようにがんばります!
MNP純増が7割増し──メイン回線シフトが進行中
さらに注目すべきは、他社からの乗り換えを示すMNP純増です。Q3/25のMNP純増は11.1万回線で、前四半期比で+71.4%と大きく伸びています。
MNP経由で乗り換えてくるユーザーは、サブ回線ではなくメイン回線として楽天モバイルを使うケースが多いとされています。そのため、
- 解約率の低下(=長く使ってもらえる)
- データ利用量の増加(=ARPUの底上げ)
といった「質」の改善にも直結しており、単なる回線数の増加以上に、収益性の向上につながりやすいのがポイントです。
Q3/25モバイルセグメントの業績ハイライト
続いて、決算数値から楽天モバイル事業の“稼ぐ力”を見ていきます。ここでは楽天モバイルを含むモバイルセグメント全体と、楽天モバイル株式会社(単体)の2つの視点で整理します。
売上収益は1,187億円、EBITDAは黒字化を維持
モバイルセグメント全体のQ3/25は、以下のような結果でした。
- 売上収益:1,187億円(前年同期比 +12.0%)
- Non-GAAP営業損失:▲386億円(前年同期から101億円改善)
- EBITDA:112億円(前年同期から164億円改善)
減価償却費などを含む営業利益ベースではまだ赤字ですが、キャッシュフローに近いEBITDAでは黒字を維持しており、赤字幅も着実に縮小しています。
楽天モバイル株式会社(単体)はEBITDA黒字、営業損失も大幅改善
楽天モバイル株式会社(単体)に絞ると、改善幅はさらに大きくなります。
- MNOサービス売上は前年同期比 +24.7%で二桁増収
- Non-GAAP営業損失は前年同期から134億円改善
- EBITDAは78億円の黒字
- 顧客獲得関連費用を除くPMCF(プレマーケティングキャッシュフロー)は243億円
つまり、「設備投資や獲得コストを除いた、本体サービスだけで見ればしっかり稼げる構造」が整ってきている状態です。楽天モバイルは、2025年通期のEBITDA黒字化達成に向けて、順調に進捗していると評価できます。
契約回線数・ARPU・解約率──「量」から「質」への転換が進行中
事業の健全性を測るうえで重要なのが、ARPU(ユーザー1人あたりの月間収入)と解約率です。ここでも、楽天モバイルの“質の改善”が数字として現れています。
ARPUは2,873円まで伸長、正味ARPUもしっかり増加
Q3/25のMNO ARPU(エコシステムARPUを含む)は2,873円で、前年同期比+21.9%と大きく伸びました。
- データARPU:前年同期比 +63円
- 正味ARPU(エコシステム貢献額を除く):2,471円で、前年同期比 +110円
特に、通信サービス部分を表す正味ARPUが+110円伸びている点が重要です。料金は据え置きでありながら、
- メイン回線としてしっかり使うユーザーが増えている
- データ利用量の増加で、上位レンジまで使われている
といった利用実態の変化が、ARPUの改善につながっていると考えられます。
一方、楽天市場などグループサービスの利用増分を表すエコシステムARPUは、ライトユーザーの流入によりやや希薄化しています。ただし、ここは今後のロイヤル化施策(SPU強化やキャンペーン)次第で、再加速の余地が大きい領域です。
解約率は1.33%へ低下、1人あたり33.5GBのデータ利用
調整後MNO解約率は、Q3/25に1.33%まで低下し、前四半期比で7ベーシスポイント改善しました。インフレ環境のなかで、
- 月3,278円(税込)でデータ無制限の「Rakuten 最強プラン」
という価格優位性が、他社と比べたときの相対的な魅力を高めていると推察されます。
また、B2Cのデータ利用量は継続的に増加しており、Q3/25の1人あたり月次平均利用量は33.5GBに達しました。動画視聴やSNS利用を中心に、「たっぷりデータを使う前提」で楽天モバイルを選ぶユーザーが増えていると言えるでしょう。
成長を支える5つのドライバー
① 楽天市場とのエコシステムシナジー拡大
楽天モバイルの強みは、単体の通信サービスにとどまらず、楽天市場をはじめとする楽天経済圏とのシナジーにあります。
- 楽天市場の月間アクティブユーザーに占める楽天モバイル契約者比率:16.2%(前年同期比 +1.8ポイント)
- 楽天モバイル契約者の年間流通総額は、非契約者比で+48.5%
SPUの倍率アップや、モバイルユーザー限定セールなどを通じて、
「モバイルが楽天市場を伸ばし、楽天市場がモバイルを伸ばす」
という循環が強まりつつあります。
② 2万3千社超まで広がった法人ビジネス
楽天モバイルの法人契約社数は、2025年9月時点で23,281社まで拡大しました。ホテル・レストラン・小売・医療・介護など、業界ごとのDXニーズに応える形で、
- モバイル回線
- 固定回線・Wi-Fi
- IoT/業務支援ソリューション
を組み合わせた提案を進めています。法人向けは契約期間が長く、解約率も低い傾向があるため、中長期の安定収益源として重要な柱です。
③ RIC導入と電力20%削減を目指すネットワーク効率化
楽天モバイルは、Open RAN環境においてAI・機械学習を活用するRIC(RAN Intelligent Controller)を導入し、基地局の制御やトラフィック最適化を進めています。
2025年内には、基地局制御等によって電力消費量の約20%削減を目標としており、今後の電気料金高騰リスクを抑えながら、ネットワーク品質とコストの両立を目指しています。
④ 楽天シンフォニーによる海外展開と技術外販
楽天モバイルのインフラ運用ノウハウをパッケージ化した楽天シンフォニーは、北米・アフリカ・アジアで新たに6社と契約、6社の販売パートナーを獲得し、累計顧客数は62社に達しました。
国内モバイル事業のために磨いてきたOpen RAN・クラウド技術が、
- 海外通信事業者向けソリューションビジネス
- 国内ネットワークのコスト削減・高度化
の両面で収益機会を生み出している点は、楽天モバイルならではの特徴です。
⑤ Rakuten 最強U-NEXTなど、付加価値サービスによるARPU向上
楽天モバイルは、料金の安さだけでなく、付加価値サービスによるARPU向上にも取り組んでいます。
- 動画配信サービスをセットにした「Rakuten 最強U-NEXT」(月額3,980円・税込4,378円)
- 端末補償などがセットになった「最強補償パック」(月額990円・初回3カ月無料)
こうしたサービスは、無制限プランを軸にした“通信+エンタメ+安心”のパッケージとして機能し、1ユーザーあたりの収益を高める役割を担っています。
950万回線突破後の論点──ユーザーにとってのメリットと注意点
完全黒字化まではもう一歩。今後チェックしたいポイント
ここまで見てきたように、楽天モバイル事業は、
- 回線数の拡大(950万回線)
- EBITDA黒字化と営業損失の縮小
- ARPU・解約率の改善
という意味で、明確に「改善フェーズ」に入っています。一方で、減価償却費などを含むNon-GAAP営業利益ベースではまだ赤字であり、完全黒字化までは距離があるのも事実です。
今後の決算で注目したい指標は、
- モバイルセグメントのNon-GAAP営業損失の縮小ペース
- ARPU・解約率のトレンド(改善が続くかどうか)
- 電力コスト・設備投資の抑制と、ネットワーク品質のバランス
などです。
ユーザー視点での「安心材料」と「確認しておきたいこと」
契約を検討している方にとっては、
- 事業としての持続可能性が高まっていること
- メイン回線として使う人が増え、解約率も下がっていること
は、大きな安心材料と言えます。
一方で、エリアや通信品質については、地域ごとの差がゼロになったわけではありません。基地局の新設・最適化は進んでいるものの、お住まいのエリアのサービスエリア情報や、地下鉄・屋内などの対応状況を事前に確認することをおすすめします。
まとめ:950万回線はゴールではなく、「黒字拡大フェーズ」のスタート地点
楽天モバイルの950万回線突破は、「とにかく契約数を増やす段階」が終わり、
・収益性を高めるフェーズ(EBITDA黒字化)
・楽天市場などエコシステム全体で利益を最大化するフェーズ
へと本格的に移行したことを示す節目と言えます。
まだ完全な黒字化には至っていないものの、
- 回線数の成長
- ARPUと解約率の改善
- ネットワーク効率化と技術外販
- 楽天経済圏とのシナジー拡大
といった要素が噛み合い始めており、モバイルセグメントは楽天グループ全体の増収・利益拡大を牽引するポジションになりつつあります。
これから楽天モバイルを検討する方にとっては、
- 価格の優位性はそのまま
- 事業の安定性・将来性はむしろ強まっている
という状況です。ご自身の利用スタイルやエリア状況を確認しながら、「今」選ぶ価値があるかどうか、ぜひ判断材料のひとつとして参考にしてみてください。


